前回からの続きです。

 でもいずれにしてもピックアップをボディ直付けにしても結局弦の音やボディの鳴りは拾わないんです、やっぱり。むしろピックアップをボディに直付けすることによって、先ほど書いたようにボディの衝撃音などの余分なノイズだけが足から伝わってくることになりますので逆効果じゃないかと思います。そもそもなぜオリジナルではピックアップを宙吊り状態にしているのかを考えれば、やはりそうする方が良い音を鳴らすために合理的であるからだと思います。

 それでもボディの鳴りをピックアップが拾うと信じて疑わない方はおられるでしょうが、ウソだと思うのであればご自分で実験してみればすぐわかりますよ。実験つったって簡単ですよ、エスカッションからピックアップを取り外してボディの上に置くだけなんですから。こんな簡単なことすらご自身で検証も行おうとしないで「ピックアップがボディの振動を拾わないはずがない」と頑なに主張するのはちょっとフェアではありません。やはり自分で一度試してみれば私が百回いうよりも一番良く分かると思いますよ。

 そう考えると、本当にエレキギターメーカー、ピックアップメーカー、そして多くのギタリストや評論家達がどれほどウソを垂れ流しているのかということがわかってしまいます。本当にご自分でテストすれば一発です。ピックアップはボディの鳴りなど拾いませんし、ボディに直付けすればボディ鳴りを拾うのも全くのウソ。絶対あり得ません。理屈から考えても絶対にあり得ません。

 高校の時電磁誘導を化学(今は物理なのかな?)で習って理解された方であれば、ピックアップの仕組みは簡単に理解できるはずです。そしてなぜ弦の振動以外の音を拾わないのかも理解できるはずです。多分ボディの振動を拾うと考えている方はギターのピックアップがボーカル用のマイクと同じ仕組みだと思っておられるからだと思います。

 ボーカル用のマイクの仕組みはスピーカーと全く同じ構造です。磁石の周りをコイルが音の振動に合わせて動く仕組みになっています。その動きによって電流を生じる仕組みですから、どんな小さな音から大きな音まで振動さえ受ければ必ず音は鳴ります。

 しかしエレキのピックアップは磁石とコイルが固定されています。ということはボーカル用のマイクと違ってピックアップの周りでどれほど大きな音が鳴っても基本的に磁石の周りでコイルが動くことはほとんどありません。つまりちょっとした振動を受けるくらいで簡単に音が鳴るような仕組みにはなっていないのです。

 きっとこれは純粋に弦の音だけを拾いたいという昔のミュージシャンのニーズがあったからだろうと思います。普通のマイクをギターに取り付けたのでは、ハウるし、ギター以外の音も拾うし、といろいろ問題があるので、いろいろと考えた結果このように周りの音に一切影響を受けないピックアップを作ったのでしょう。

 じゃあどうやったらピックアップから音が鳴るのか、といえば、磁石(ポールピース)のすぐそばで金属製のもの(弦)が動いて磁界を乱す(動かす)とコイルで電流が発生するのです。だから磁界を動かすことができる金属の振動がないとピックアップからは音は絶対に鳴らないのです。だから大声はほとんど拾わなくても音叉の音はきちんと拾ってくれるたりするのです。

 エレキギターのピックアップってそういうものなのです。だから私がエレキギターを持つようになってもう30年も経ち、これだけ情報が溢れている時代になっているにもかかわらず、以前にも増して全く根拠のないオールドピックアップの「神話」やボディ鳴りがサウンドに与える影響に関する勘違いに溢れていることに少し驚いています。

 なぜこのような話が都市伝説のように世界中で信じられてしまっているのかという理由は、多分エレキギターもバイオリンやアコースティックギターのように「ボディが最も重要な弦楽器」と信じていたいというギタリストの心理が有るのでしょうね。「ボディが最も重要な弦楽器」であるならば、当然ボディの鳴りは重要ですし、実際にエレキギターでも経年変化によってボディの鳴りに変化があるからです。

 木に関する専門書を読めばお分かりになりますが(例えば西岡常一氏という宮大工が昔に書いた「法隆寺を支えた木」という本など)、木というものは伐採後2-3百年間は強度が増していきます。それからゆっくりと徐々に徐々に強度は落ちるのですが、落ち方がゆっくりなので千年以上経っている法隆寺の木の強さと伐採直後の木の強さはほとんど変わらないのだそうです。

 ですからバイオリンなどが作られてから2百年くらい経って最高の鳴りになることにはきちんと科学的な理由があるのです。そのような話をエレキギターにも当てはめて論じたい、というのがギタリストの正直な気持ちでしょう。私もそう思います。そういう楽器が成熟していくロマンをアーチストとして語りたい気持ちは凄くわかります。

 また長くなったのでその3に続きます。

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