前回ボディ鳴りのサウンドへの影響を書きましたが、私自身謎に思っていたことを考えてみましょう。それは「同じギブソンのピックアップを取り付けてもレスポールとストラトでは同じ音がしない」ということですね。

 これは多分ほとんどの方が気がついておられると思いますので、このことがきっとボディ鳴りがエレキギターのサウンドに影響していると多くの方が考える大きな理由ではないかと思います。

 しかしこれについては前回書きましたように、レスポールとストラトでは弦を鳴らす条件があまりに違いすぎます。まずネックやボディの材質が違う。材質が違うということは弦の振動の減衰が違うということですからサスティンに違いが出ます。またネックのセット方法がデタッチャブルかセットかで違う。これも当然響きに影響を与えます。

 そしてテイルピースの違いやブリッジ(駒)の堅牢さの違い。明らかにレスポールの方がサスティンは良くなるような構造になっています。またスケールや弦のテンションの違いも大きいでしょう。スケールが短い方が弦のテンションは低いですから太く重い音になるはずです。当然フレットの太さや材質も違います。

 これだけ弦の音に影響を与える部分で違いがあるのですから、同じピックアップを使ってもレスポールとストラトで音が違うのは当たり前なのです。同じピックアップでもレスポールと335のサウンドが違うのと同じです。

 ですから多分レスポールと同じ木材を使って、同じスケールで、同じテイルピースで、ネックもセットネックにしてストラトシェイプのギターを作れば同じ音がすると思います。これはボディ鳴り云々の話ではなく、弦の振動が同じように振動するから似たようなサウンドになるという理由です。

 そういう意味でいえば、もし仮に全く同じスペックで作った新しいギターと古いギターでサウンドが違うとすれば、ボディの鳴りの影響があるのかも知れません。今までの話と矛盾しているように聞こえるかも知れませんが、しかし一般的にいわれているボディ鳴りの話とは全く意味合いが違います。

 つまりもし仮に木材がエイジングする過程で鳴りが良くなってくるとしたら、新しいギターと古いギターではサスティンに差があるはずです。つまりボディ鳴りの良い古いギターほど弦のサスティンは悪いはずです。そうなると当然アンプから出てくる音のサスティンにも違いが出てきますので全く同じスペックで作られた新しいギターと古いギターで音が違うことになるのではないでしょうか。

 それを世の中では「枯れたサウンド」というのかも知れませんが、しかし私見ではエレキギターのエイジングの与える影響というのはほとんど無視できるのではないかと思います。だから同じスペックで作られたギターがあれば新品でも50年前のものでもほとんど違いはないと思います。

 仮に違いがあるとすれば、電気系統の材質や半田の劣化、部品のガタなどで様々なロスが生じるからではないかと思います。もしオールドギターのパーツ関係を全て新品にすればやはり新しい音が出るのではないかと思います。私はやったことありませんが、どなたかテストして下されば多分簡単に証明できると思います。

 そういう理屈から言うなれば、エレキギター、エレキベースに関しては一般的な生楽器の感覚でいう「鳴りの良い」状態ではアンプから出てくる音は悪いことになり、逆にボディやネックが重く固い部材で弦の振動に共振しないほどアンプから出てくる音は「鳴りが良い」ということになると言えるのではないでしょうか。

 生楽器のように何かに音を共鳴させて大きな音を鳴らしたり響かせたりする仕組みでないエレキギター、ベースでは生楽器とは逆になるべく弦振動と共鳴しない部材を使って製作する方がアンプからは本来良い音が出るはずだと思います。そもそも音を鳴らす仕組みが生楽器とは大きく異なるわけですから、生楽器の一般的な「鳴り」の概念を持ち込んでも意味はないと思います。その理由はピックアップがボディ鳴りを拾うことはないからです。

 ちなみにこの話、実は二十数年前くらいのロッキンfにどなたかが掲載していた話に似ています。詳しい内容は忘れましたが、確かその方も同じように「エレキギターの音は『ボディ鳴りが良い』ほど実際には弦の振動を殺してしまう」と書いていたと思います。

 一般的な通説、イメージとは逆なのでなかなか受け入れてもらえない話かも知れませんが、エレキギターの音が鳴る仕組みを物理的に考えれば今まで書いてきたような内容にならざるを得ないと思います。ですからオールドギターであれ新品のギターであれ、部材がしっかりしてパーツがしっかりと組み付けられていればエレキギターに関してはアンプから良い音がするはずで、ボディとかネックの鳴りは逆に本来のエレキギターの音にとっては「吸音装置」「消音装置」に他ならないということです。

 エレキギターにとってはボディやネックはやたらと鳴りすぎない方がイイのではないでしょうか。インターネットでもなかなか同じ意見に出会うことはありません。ただ最近一度だけ私と同じように「エレキギターのボディ鳴りなど意味ない。重要なのはピックアップとアンプ。」と断言されている方がおられました。

 でも実際本当に音の善し悪しを見分けることができる方であれば、ボディの鳴りがピックアップから拾われていないことは薄々気がついておられると思います。ギターメーカーだって本当はわかっているはずです。ただそういってしまうと何の夢もロマンもなくなってしまいますし、生楽器のようなアカデミックさがエレキギターから消えてしまいますので敢えて触れないのだろうと思います。

 多くのユーザーはギターメーカーや有名ギタリストが作った「迷信」を信じているだけに過ぎないのです。確かにその「迷信」を信じていれば楽しくて夢のある話ではありますが、でもなんか騙されているような・・・(笑)。

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