エレキギター、とりわけオールドを語る際に必ず使われる魔法の言葉は「経年変化」です。オールドの生音を語る際にも「ボディ材の経年変化」、ピックアップのトーンを語る際にも「ピックアップの経年変化」と、実に都合よく使われる言葉です。

 でもこの「経年変化」について誰も証明したことがないし実証したことがないところが本当に不思議です。今日も某ぼったくりピックアップメーカーの宣伝文句を読んでいますと「・・・もちろん経年変化も考慮してピックアップを作っています、云々」と書いていたんですが、その理想サウンドは60年代から70年代のロックのサウンド。

 ・・おい、ちょっと待てよ。60年代とか70年代当時のサウンドって、お前ギターやピックアップが作られてから10年も経ってねぇじゃねえか。それじゃ何かい、そんな短期間にピックアップって「経年変化」を起こしちゃうものなのかい?(笑)

 60年代、70年代当時のサウンドを再現するのに「経年変化」はカンケーないでしょ。だってその当時の新品の楽器やアンプを使って当時の連中は演奏してただけなんだから。それよりも当時のサウンドを再現したいんだったら、その音を直接録音したマイクやレコーダーなどの録音器材の影響の方が遙かに大きいんじゃないの?あと録音技術の違いとか。

 なんかね、話がメチャクチャなんですよ。録音する器材が全然今と違うのに、50年前に録音された音を聴いて良いだの悪いだの、経年変化がどうのって、意味あんのかなぁ?それを都合良く「経年変化」という言葉で全部うやむやにしちゃうんだもの。

 そもそも「経年変化」なんか起こしていたはずがない60年代、70年代当時の楽器の音を再現するために「経年変化」させたピックアップを使う必要なんかどこにあるの?でしょ?60年代、70年代のサウンドを再現するのなら、当時と同じスペックで作った「新品」を使うべきでしょ?違う?

 ジミーペイジは音がよいという理由でワザと古いギターを使っていた、というウワサが広く世間では知られていますが、あれにしたって70年代初頭に58年とかに作られたギターを使ったとかどうとかというレベルの話ですよね?ギターが作られてからたった10年ほどしか経ってませんやんか。

 その程度の年数でギターのボディやピックアップが素晴らしい「経年変化」を起こしたといいたいんでしょうかね?たった10年で形が変わるようなショボイ材質でボビン作っていたってわけ?でも作られてから十数年で経年変化が起きるんだったら、今の世の中には素晴らしいサウンドを奏でるギターだらけですよね(笑)?私のギターはどれも30年以上経ってますし、T-バッカーだってそうですよ(笑)?

 私のはボロだから経年変化が起きないけど、ペイジのレスポールはものがいいから経年変化を起こすとでも?それなら納得か(笑)。でも「経年変化」を都合よく使う人達って、結構それを理由にするんですよね。だから塗装もラッカーフィニッシュが良くてポリはダメだとかね。ピックアップのボビンの材料も○○じゃないとダメだとかね・・。

 でもこのブログで何回も書いていますように、エレキギターの部品に経年変化なんて関係ないって。そりゃ回路を覆うサビや皮膜によって接触が悪くなって音が変わることはあると思いますよ。でもそれは「経年変化」じゃありません。ただ錆びてボロくなっただけの話。そんなもん接点復活剤でもぶっかけてサビや皮膜を落とせば元の新しい音に戻るはず。

 ボディ材の経年変化についてはもうなにをかいわんやの世界。だってオールドギターと新品のギターに同じピックアップ載せて弾いて、どちらがオールドギターの音というブラインドテストをしたとしたら正確に言い当てる人なんてまずいません。そんなエレキギターの木が50年経とうが、100年経とうが、ピックアップから拾われる音には影響しませんって。仮に影響があるにしても1%も影響しませんって。

 もちろんオールドギターをコレクションの対象として見ること自体は悪くありませんよ。私も好きですし。良く楽器屋さんでオールドギターを見て「へぇ、なかなかカッコいいねぇ」とは思いますからね。でもアンプからの音は変わりませんって。変わるとしたらどっかが錆びて音がまともに出なくなってるだけですってば。

 ただちょっと視点を変えますが、もし58年頃に作られたギターの「今の」音をアンプから出したいのでしたら、いわゆる「経年変化」というヤツを考慮して作られたピックアップを使うこともアリだと思いますよ。だってオリジナルのPAFが作られてから50年以上も経つ古いピックアップなんですから、それと全く同じ音を出したければその昔のピックアップが辿ってきた経過を再現してやらなきゃいけないでしょうね。

 でも逆に訊きますけど、昔の58年製のPAFがついたレスポールを今の時代に弾いているプレーヤーって誰がいます?もしいるとしてもどんな音でギターを弾いています?少なくとも私はそんなギタリスト、一人も知らないんですけど。そんな誰も聞いたことがないような幻のサウンドを再現するために「経年変化」を考慮したピックアップを使うわけ(笑)?それも不思議な話じゃないですか?

 実際にはさっき書いたみたいに、みんな60年代、70年代の「当時の」音を再現したくてPAFモデルを手に入れようとしているんですよね?だってPAFのサウンドなんてその頃の音楽くらいでしか聞けませんもの。だったら50年も「経年変化」させたPAFコピーのピックアップは必要ないじゃないですか。ね?そうやって筋立てて考えると話がものすごく矛盾してることがわかりますでしょ?

 ですから「経年変化」という言葉を都合良く使って宣伝しているピックアップメーカーや楽器屋なんて信用しないで下さいね。この言葉を使う時点で何もわかってないことの裏返しなんですから。なんでも「経年変化」って言えば客を騙せるとしか思ってないんですから。

 まあ皆さんがそのメーカーやお店の「信者」であれば無理に止めはしませんが・・(笑)。でもそれって安物のツボを100万円で買わされる心霊商法とやってることは全く一緒に思えるんですけどね・・。

 でもこの話に決着をつけるためには私がオリジナルのPAFを手に入れることですね(笑)。だってそれしかないでしょうに。でもそのオリジナルPAF自体を買おうとしても本物かどうかがわかりませんし、ものによって音がバラバラなんですから手に入れたってその善し悪しは分かるのか?というレベル。

 結局オールドPAFが本当に良いピックアップなのかどうかは今となっては誰にもわからない、というオチです(笑)。それを完全再現した!と言っているぼったくりピックアップメーカーのピックアップを使っても結局は再現できてるかどうかなんて誰にもわかんねぇ、って話です。

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