バディー・リッチについて

2007/09/02 Sun 00:45

 バディ・リッチは私の好きなドラマーの一人です。最近昔から現代までの様々な有名なドラマーの演奏を見ていて思ったのですが、バディ・リッチは多分ドラム界に革命をもたらすほどの天才ドラマーだったんだろうな、ということです。

 確かに今ではバディより上手なドラマーは沢山います。でもそれらは全部バディが世に広めたテクニックやプレイスタイルを発展させただけではないかと思うことが多いのです。彼の凄まじいまでの粒の美しさ、ドラム自体のトーンの美しさ、そしてスティックプレイや片手ロールなどで見せるショウマンシップ溢れる驚異のテクニック。

 しかしジャズドラマー全般について言えることですが、確かにドラマーのテクニックは凄いのかも知れませんが、あまりに独りよがりで何やってんのかさっぱり意味が分からないようなプレイ、リズムやドラムのチューニングをする人も決して少なくありません。そしてさも一般人には理解困難なフレーズをプレイできることを「一流ジャズミュージシャン」であると勘違いし、そういうプレイを行うことに命を懸けている勘違いジャズ演奏家を多く見かけます。

 しかしこういった一見難解なプレイが結局ジャズが多くのファンを失って「通」ぶった人だけがうんちくを垂れながら聞くとてもスノッブでマイナーな音楽に成り下がった原因だと私は思っています。そもそも音楽にしても絵画にしても、多くの人の支持を得てこそそれが本物となるわけです。汚いトーンで、バンドのメンバーですら合わせることが出来ないほど訳の分からないリズム。そんな訳の分からない音楽を平気で演奏していたからジャズから多くのファンが逃げたのです。ですからたとえ迎合と揶揄されようと、やはり多くのファンやプレーヤーの共感を得られるプレイを行うことには大きな意味と価値があるのです。

 そういう意味でもバディのプレイは常にリズムとノリがあり、そして聞き易さと分かり易さ、そして単純に凄さを感じさせるものであり、そのある種の明快さがバディの最も良いところであり、それ故多くのドラマーや一般音楽ファンから卓越した天才ドラマーとして評価が得られたのだと思います。

 Drummerworldでのバディの動画を見ているとあまりのテクニックとノリの凄さに驚くばかりであり、このプレイをマッチドでプレイしているのが70年代の有名ロックドラマー達であるイアン・ペイスやジョン・ボーナムであり、彼らのドラムソロを見ているといかにバディから大きな影響を受けているかというのは明らかに思えてきます。

 いまだにデイヴ・ウェックルなどの現代の超一流プレイヤー達も自分の教則ビデオでバディのテクニックについて解説したりしていますので、バディがいかに時代を超えて多くのドラマーに影響を与えたかということに誰も疑いはないでしょう。

 楽器の世界では必ず何十年かに一人くらいのペースで天才的なプレーヤーが登場します。そしてそのプレーヤーの登場後その楽器に関する演奏レベルがぐっと上がることが少なくありません。最近のロックギターでいえばエディ・ヴァン・ヘイレン、イングヴェイ・マルムスティーンあたりになるのでしょうし、ジャズトランペットでいえばマイルス・デイヴィスあたりになるのでしょう。ドラム界でいえばきっと間違いなくバディ・リッチになるのではないかと個人的に思っています。

 繰り返しますが、今ならバディのようなプレイは当たり前ですし、彼よりずっとテクニシャンであるドラマーはいくらでもいるでしょう。でもそれはバディがそのテクニックを世に広めたからなのです。当然バディの登場後のドラマーにとってはバディのテクニックは当然マスターすべきものとなるためバディのテクニックが今では普通のテクニックになっただけの話なのです。しかしそれだけ影響力のあるプレイをしていたというところがバディの凄さなのです。

 先ほどのロックギターについてもいえば、私の記憶の中ではここ30年くらいではエディ・ヴァン・ヘイレン以上に革命的に影響をもたらしたギタリストはいないでしょう。何故なら彼の登場後どれほどストラトタイプのギターのリアにハムバッキングピックアップとトレモロアームがセットになったものが世に溢れたことか。そして右手を使ってフレットを押さえたりタッピングハーモニックスを出すプレイがジャンルを問わず当たり前のごとく使われていることなどを見ればエディのプレイがどれほど革命的で、しかも誰にでも受け入れられる画期的なものであったかが伺い知れます。

 話を元に戻せば、ドラムの世界ではここ100年くらいの間で最も影響をもたらしたドラマーはきっとバディ・リッチでしょう。ですから彼のプレイを研究することはドラマーとしての基礎テクニックを全て研究することであり、それをマスターすることができれば今の時代でも十分すぎるほど通用するものであると言えるのではないでしょうか。

 どんなジャンルを演奏しているドラマーであっても、もしまだバディのプレイを見たことがなければぜひ一度彼のプレイを動画で見てみることを強くオススメします。数十年前にこんなプレイをしていた人がいた、ということに多くの方が大きな衝撃を受けるのではないかと思います。
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