またまたピックアップの話です。いろいろとページを見ていますとまたおもしろい話がありました。例えば「ハムバッカーの磁石を反対にセットするとトーンが変わる」だの「ピックアップを前後逆に取り付けると低音弦側で周波数が変わるのではないか」など・・。?

 面白いことを言いますね(笑)。そりゃありえませんよね、絶対に。というか二つめの「周波数が変わる」と言うことについては、確かに波形はひっくり返りますが、周波数は変わりません(笑)。周波数が変わったら音の高さが変わっちゃうわけですから、そんなことがありえるはずがありません。ピックアップを前後ひっくり返すだけで音の高さが変わっちゃったら、そりゃ摩訶不思議なマジックピックアップですよ。ピッチチェンジャーなんて要りませんよ(笑)。

 こういう話をなさる方は多分、本当にピックアップがどういう仕組みになっていて、どういう風に電流が発生しているのかあまりご理解なさっておられないのでしょうね、きっと。でおっかないのは、プロのギタリストやリペアマンにこんなことを言う人達がいるので困っちゃうんですね。そんなもの、磁石ひっくり返したくらいで音が変わりますかいな。少なくともピックアップを単独で鳴らしている限りにおいては。でも場合によってはピックアップメーカーなどでこんなことに近い話をする人もいるので、ホントコワイです。

 弦が揺れることでポールピースの磁界を動かしてボビンで電流が発生し、それがアンプで音に変換されるわけですが、弦振動や音というものは波状になっています。あるポイントを中心にしてほぼ同じような波形を作りながら振動しています。

 この弦の振動をピックアップで拾って電流を起こさせるときには、その弦の動きに応じて電流の発生する方向が変わります。例えば弦がポールピースに近づいてくるとボビンの左側に電流が流れ、弦がポールピースから離れていくと右側に電流が流れる、というようにです。

 弦というのはもの凄い振動数(基準音であるAは440hz=つまり一秒間に440振動)で揺れていますから、その動きに応じてピックアップでは電流をプラスマイナス交互に、つまり交流の電流を発生しているのです。

 で、磁石のNSをひっくり返したらどうなるのかと言えば、この弦の振動に応じて発生する電流の波形がひっくり返るだけのことです。つまり最初にプラス方向に電流を発生させていたものが逆に最初にマイナス方向に発生させることになるだけです。磁石がどっちを向いていても、結局同じ波形に基づいて交流の電流を発生させているのですから音が変わるはずがありません。絶対に。

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 実際、ストラトなどではポールピースの磁石をフロント・リアとセンターとでわざと逆にすることがあります。これはこうすることでハーフトーンにしたときにノイズをなくすために行うのですが、でもポールピースの極性が逆になったからと言って音が変わったなどと言う話は聞いたことがありません。ですからハムバッキングでも当然に音が変わるはずなど無いのです。

 磁石の極性を反対にしたときに問題が起きるケースは、別のピックアップと一緒に鳴らすとき(例えばストラトのハーフトーンやレスポールのセンターポジションなど)に他のピックアップのコイルの巻く方向や極性の向きによってはそれぞれのピックアップから発生する電流が正反対に発生することがあり、そうなるとお互いのピックアップが拾った音を相殺することとなり、音がフェイズアウトしてしまうことです。

 問題と言えばそれだけのことで、逆にわざとフェイズアウトさせるサウンドを好む人もいますから、結局のところ磁石がひっくり返ったくらいのことで音が変わることはありえないのです。

 なんか面白いですねぇ・・。私もピックアップについて全てのことを知っているわけではありませんが、しかし「専門家」を自負しているような人達があまりに嘘八百というか、基本的なことを知らなすぎるというか、そんなことを平気でホームページに書いていたりするので驚いちゃいます。だってそこに書いてあることを実験すればすぐに間違っていると分かるレベルのことが書いてあるんですもの。

 で、そういう人達が「オールドのボディの鳴りをピックアップが拾う」だの「ボディ直付けすればボディの音をピックアップが拾う」などという眉唾物の話を大きな声で宣伝するわけです。専門家にそんなことを言われれば、多くの人は本当の話だと思って信じちゃいますよね。

 何度も言いますけど、ピックアップはボディの振動など拾いませんよ(笑)。拾っているのは弦の音だけ。ボディ材やネック、木の善し悪しで弦の振動の支え方が変わるからギターの種類などでピックアップが拾う弦の音が変わるだけのことです。ボディの鳴りを拾っているのではなく、ギターによって弦の鳴り(振動)が異なっているだけのことなのです。

 なんかこんな話ばかりホームページで読んでいると、プロのリペアマンっていうのもどこまで信用して良いのかわかんなくなっちゃいます・・。まず最初の「音が鳴る」と言うことに関する知識からして間違っているわけですから、その他の作業に関する信頼もどーなんだか。

 まあもちろんフレット調整やボディの改造や塗装に関してはリペアマンはさすがにプロの仕事をしてくれていると思いますが。

 それからピックアップに関してはやたらと抵抗値(オーム)ばかりを気にするユーザーやメーカーがいます。ボビンにワイヤーをたくさん巻けばそれだけ抵抗値は増えることになりますが、しかしボビンはトーンを決めるだけです。と、いうより磁石が無ければボビンだけでは音は拾えません。

 結局ピックアップのパワーやトーンを決定づけるのは磁石です。確かに同じ磁石を使うのであればボビンの巻数によってトーンやパワーは変わりますが、それも結局は磁石とのバランスがあってのこと。それなのにやたらとボビンの抵抗値ばかりこだわることにはどれほど意味があることなのか、ちょっと疑問に思います。

 ピックアップも電気製品なんですから、メーカーや専門家ももう少し根拠のある説明をしてくれないと、ね・・・。あまり「マジック、マジック」とごまかすのもいかがかと・・・。

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