面白そうなので最近古いギブソンのピックアップをebayで探しています。もちろん買うつもりはないのですが、一体相場はどれくらいなのだろうと思いながら見ています。

 で、いろいろ見ていますと、怪しい出品がたくさんあります。「本物のPAF」なんて書いて出品してあるクセにポールピースが12本ともネジになっていて裏に変なスタンプの押してあるものとか、足の形が違うものとか、他にもTバッカーの刻印付きベースプレートの上にPAFスタイルのボビンが乗せてあったりする奴とか、同じように「73年製のレア!」とかいって嘘くさいパテントナンバーが刻印されたベースプレートにPAFのコイルがひっついてしかも4芯(!)になっているものがあったりします。そりゃ「レア」だわ、そんなもの多分世界にそれ一つしかないもの(笑)。年代的にそのような組合せは絶対に存在しません。

 もっと面白いのは、カバー付きのピックアップで「カバーは開けたことがありません」と書いているにもかかわらず、商品名が「白ボビンとゼブラのピックアップのセット」と書いてあるものがあったりします(笑)。さすが胡散臭いです、大国アメリカのオークションは。信用できませんねぇ。もーめちゃくちゃ。

 まあこれは何も知らない素人を騙そうとしているのか、出品者に何の知識もないのかのどちらかでしょうね。いずれにしても怪しいことには違いなく、日本からオークションで買うのであれば相当な知識と度胸が必要でしょうね。ebay自身も「ギブソンのギターとパーツの"ニセモノ”に注意」としてオールドピックアップのニセモノが多いことについてユーザーに注意喚起しているほどです。

 こういうのを見ていてもっとも怪しいと思うのは、オリジナルのオールドPAFとナンバードステッカーと呼ばれるピックアップです。なぜならステッカー(デカール)などすぐに作れるし(実際に売っています)、その貼り方だって「本物はラッカーでオーバーコートしてある」と指摘してるわけですが、裏返せばラッカー塗ってエイジングさせればすぐに同じものが作れると言うことなのです。

 しかもボビンは今どきPAFをそっくりコピーしたボビンなど有名メーカーのものを含めていくらでも市場に出回っています。そのうちパラフィンに浸していないものを買ってきて、ボビンを外し、何も書いていないベースプレートをどこかから探してきてボビンを乗っけて黒いマスキングテープで貼り付け、そして裏にデカールを貼ってラッカーを吹けばよいだけのこと。簡単ですよ。これで新品「オールドPAF」のいっちょ上がり!

 で、エイジングなんて、適当に傷入れたり、叩いたり、金属部分は薄い薄い塩水でも適当にまぶして錆びさせて、埃をかけて、靴墨塗って・・、まあそんな感じにやってればすぐに50年くらいの古さになるでしょう。これくらいのこと誰にでも簡単にできますから、ニセモノPAFを作るのは本当に簡単。それを20万-30万円くらいでオークションに出せばよいわけですから、これはなかなかいい商売です。だって誰も本物を知らないし、さらには本物自体品質がバラバラなんですから誰にも真贋は分かりっこありません。

 そもそもPAFを作ったセス・ラバーですら本物のオールドPAFのスペックは一定していなかったとはっきり言っています。「コイルの巻き数はどうやって決めていたの?」と言う質問に対しセスは「ボビンいっぱいに巻けるまで(笑)。」と答えたそうです。だから巻数も5千回が一つの目安ではあったのでしょうがこのあたりはとてもアバウトで、PAFの個体によって音が違うのは当然だったわけですね。

 しかも音を決定づけるマグネットまで仕様がバラバラです。今はトムホームズやダンカンも「更に本物に近い」というPAFコピーモデルを作っていますが、今の流行はマグネットがアルニコ2であること。でもこれもアルニコ2のオールドPAFは主流モデルではなく、逆にあまり数のないものだそう。基本はアルニコ5で、アルニコ5の材料が十分なかったのでそれ以外のアルニコ2-4を適当に使っていたのだとか。

 これらは確かティム・ショウが80年代にニューPAFを開発するときにセスに直接聞いた話だそうで、結局ティムもニューPAFを開発する際に、あまりに古いPAFが個体によってスペックが違いすぎるので、「これがPAFのサウンド!」というものはない、と結論づけています。

 様々なメーカーがいろいろなPAFのコピーピックアップを作っていますが、それについても「それはそのメーカーが参考にしたPAFのスペックとサウンドをコピーしたものか、或いは平均的なPAFをコピーしたもの」とティムは言っています。ですからそれらのサウンドキャラクターやスペックがそれぞれ異なっていても当然だし、どれも本物のPAFのコピーなのですが、しかしそれが全てではないとも言えるわけですね。

 そんなこんなを考えていますと、一番コピーしにくいギブソンのピックアップって、実は私が持っている比較的新しめのTバッカーってことになります。だってこれはボビン自体も「T」字が入っていてコピーしにくいし、しかもポールピースの中央部分に変なくぼみがあったりします。さらにはベースプレートにも特許番号を刻印しなくちゃいけません。だからニセモノを作ろうとするとこれらをカンペキにしないといけないのですぐばれちゃいます。実はマグネットも普通に売っているものとちょっと形が違うんですね。これも結構真似しにくい。

 そういう意味でオークションをいろいろ見ていると、一番安心して買えるのはTバッカーですね。そりゃ自分で持っているからどういう特徴をしているのか良く分かってますし、それにもし本物を持っていない人でも特徴を事前によく把握しておけばまず完全に信用できます。またステッカーのものでもボビンにT字が入っていればかなり信用できます。

 たとえそのステッカーやベースプレートがニセモノであったとしても、ボビンにT字が入っていればボビンはまず本物です。そういう意味ではあと10年もすればTバッカーもそれなりの値段になるのでしょうね。なぜならニセモノがもの凄く作りにくいから。でもT字入りのボビンが作られるようになってくるとオールドPAFと同じ運命を辿りますね。

 一方でPAFはその頃本当に「幻」のピックアップになって天文学的な値段が付いているでしょう。誰にも真贋が分からない、真贋を見分ける方法も実はないという・・、明らかなスペック違いがない限り雰囲気で「本物」と認めざるを得ないようなことになっているでしょう。えへ、今のうちに一つ作っちゃおうかなぁ・・っと、なんてね(笑)。

 うーん、とにかくオールドのPAFあたりになると、オークションで買うのは結構ヤバいなぁ・・。と言っても日本の楽器屋さんで買うのももっとヤバイ・・。私が生まれた年のピックアップを買うのはちょっと難しいかなぁ、でも面白そうだからもうちょっと探してみようっと。

 それか自分でレプリカ作ってエイジングさせて、なんちゃって気分に浸ろうかな・・。

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